『セルフ・コーチング入門』

読書

「あなたが自分の人生のコーチだったら、何を問いますか?」

コーチングという技術は、スポーツのコーチをはじめビジネスの分野で近年よく聞かれるようになりました。私自身は大学時代に医学関係の特別講義を聴講させてもらった時に聞いて以来、一気に興味の沸いた言葉です。


人間は自分一人で何かをやり通そうとすることは難しく、コーチと話し合いながら達成する方が容易になります。また、協力者がいることで精神的にも楽になりますね。


しかし、コーチはいつでもどこでも話せるわけではありません。また、結局のところコーチのアドバイスを受けても、考えるのは自分です。したがって、自分で自分をどのように導くか、ということが最終的な課題となります。


そこで今回は、本間正人・松瀬理保(2016)『セルフ・コーチング入門〈第2版〉』日本経済新聞出版社を紹介します。


本書は、セルフ・コーチングというコーチングの一種を紹介している本です。入門という言葉通り、専門的なことよりも、入り口としてわかりやすく、利用しやすいものになっています。


セルフ・コーチングは、それを自分一人で行うためのノウハウです。本書では、「心の中にコーチを持つこと」と表現されています。ある種の自問自答ですね。しかし、苦悩するような自問自答ではなく、物事を達成するために、上手に自問自答する方法のようなものと言えそうです。


私たちが一人で物事を考えていると、ドツボにはまって全く進めなくなることがあります。これを本書では5つの「思案の罠」として記述しています。


◯5つの思案の罠(p.56)

①なぜなぜ回路→状況を前向きに受け止める。プラス材料を探していく。
②ぐちぐち回路→逃げの姿勢に入らず、「今、自分にできること」を探す
③心配回路→心配している自分を好意的にとらえる。最悪の事態を考える
④憶測回路→いったん立ち止まる。事実と推測を峻別する。必要な判断材料を収集する
⑤散漫回路→セルフ・コーチングの開始宣言。質問を自分に発し答えを書き出す。場所を変える




この罠に陥らないように、あるいは陥ったときに抜け出すにはどうしたらよいでしょうか。


一つは人に話すことです。誰かのふとした質問、客観的な視点が、あっさり思考を整理してくれることがあります。これを意図的に行うのがコーチングです。


では、セルフ・コーチングではどうするか。


これも結局問う(自問自答する)ことになります。そのための質問例として、本書ではユニヴァーサル・クエスチョンというものが例示されています。(「非常に汎用性が高く、様々なテーマ、状況に効果的にあてはまる普遍的な問いかけ」)


◯ユニヴァーサル・クエスチョン(Universal Question、UQ)の例

〈UQのリスト〉(p.47)
・実現したいことは何ですか?
・自分のやりたいことをはっきりさせると?
・それが実現したら、どんな状況になりますか?
・過去からリソースを探してみましょう
・これまでに一番うまくいった方法は?
・その体験から何を学んだのですか?
・前向きにとらえると?
・自分の特徴、強みを見つめ直してみましょう




これらを自らに問いかけながら、自分の向かいたい方向へ進んでいくことが、セルフ・コーチングと言えます。自分の中にコーチを作るイメージですね。


しかし、これらの問いをどのように利用していけばよいのでしょうか。本書では、WISDOMモデルが提唱されています。


◯WISDOMモデル(p.72)

 Will(志を立てる)
 Image(成功のイメージを描く)
 Source(エネルギー源を探す)
 Drive Map(成功までの地図を描く)
 Operation(行動に移す)
 Maintenance(習慣化への努力)




セルフ・コーチングでは、一貫して自らに問いかけることを重要視しています。つまり、問いかけを通して、思案の罠へ陥ることを避けながら、WISDOMモデルに沿って自らの描く成功を導くものと言えます。自己への問いかけを通して成功へと至る技術とも言えます。





問い、というのは私の人生のテーマとなりつつあります。問いの機能的な側面としてコーチングは大変興味ぶかい。


最後に、以上の内容は、あくまでセルフ・コーチングの一例であることに注意が必要です。自らをコーチングするための手法はおそらく無数にあり、その中の有力な一つとして捉える必要があるでしょう。


では、セルフ・コーチングの本質は何かと言われれば、私は「対話」であると思います。自らに対して上手に問う、それによって何かを成すことを容易にしていく。そういう意味ではファシリテーションとの親和性はかなり高いと言えます。本書のモデルを利用しつつ、自分に合う形に調整していく必要があるでしょう。

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